2016年12月20日
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古への移設計画をめぐり、埋め立ての承認を取り消した沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事を国が訴えた訴訟の上告審判決で、最高裁第二小法廷(鬼丸かおる裁判長)は、県側の上告を退けた。
裁判長、小貫芳信判事、山本庸幸判事、菅野博之判事の4人の裁判官全員一致の意見。
2016年12月26日
翁長雄志(おながたけし)知事は、前知事による「辺野古沿岸部の埋め立て承認」を取り消した自らの処分を取り消した。前知事の承認の効力が復活。
2016年12月27日
政府は、埋め立て工事を再開(形だけ、本格的には2017年から)。
2016年12月28日毎日新聞 社説 辺野古埋め立て 性急過ぎる工事再開だ
なぜそんなに急ぐのか。沖縄県・米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設工事を国が再開した。最高裁が沖縄県の埋め立て承認の取り消しを違法とした判決から1週間である。
国は、沖縄県が求める工事再開前の事前協議にも聞く耳を持たなかった。県側は、あらゆる権限を使って移設工事を阻止する構えを見せている。国と県の緊張が一段と高まるおそれがある。
最高裁判決を受け沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が取り消し処分を撤回する通知文書を国に送り、きのう防衛省沖縄防衛局が受け取った。工事再開は、それを踏まえた対応だ。
これに先立ち、翁長知事は首相官邸で菅義偉官房長官と会談し、工事再開前の協議を求めたが、菅長官は「工事再開の方針は変わらない」と平行線をたどった。
これに対し反対派の人たちは「工事再開は許さない」と抗議の座り込みなどを行った。
埋め立て工事は3月に国と県の代執行訴訟の和解で中断していた。再開は埋め立ての承認効力の復活を確認したうえでの措置であり、法的な手続きとしては問題はない。
しかし、あまりに性急だ。多くの米軍基地が集中し、事件や事故が絶えないなかで暮らす沖縄の県民感情に配慮すれば、もっと丁寧なプロセスを経てもいいはずだ。
事前協議は埋め立て承認時の留意事項にもある。法廷闘争直後でもあり、信頼関係の再構築を探る場が必要だった。
沖縄県では普天間飛行場所属の新型輸送機オスプレイの重大事故から6日後の飛行再開を認めた政府への批判があった。今回の工事再開も沖縄県民の心情を逆なでするものだ。
きょう、安倍晋三首相が太平洋での日米開戦の地となった米ハワイ・真珠湾のアリゾナ記念館を訪問し、オバマ米大統領とともに戦没者を慰霊する歴史的な行事が行われる。
米政府は最高裁判決を歓迎している。慰霊を前にしたタイミングでの工事再開だけに、米国にアピールする政治的な意図があるとみられても仕方ないだろう。
翁長知事は「絶対に新辺野古基地は造らせないという気持ちで頑張る」と語った。来年3月で期限切れとなる岩礁破砕許可の更新を認めないことも想定しているようだ。
移設反対派の後押しを受けた翁長知事である。国がかたくなな姿勢を貫いて県民感情を害し続ければ、現実的な解決は遠のくばかりだ。
沖縄県内最大の米軍施設・北部訓練場の約半分が返還されるなど米軍基地整理・縮小も進んでいる。不信の連鎖を断ち、建設的な対話の環境整備こそ急ぐべきだ。